夢みがちなせかい

いつだって、夢みたい。

ノンフィクションのフィクション

 

 

 

「どうしたら、幸せになれるんだろう」

 

 

自分が可哀想だと、彼女は嘆いていた。

 

皮肉でも、性格の問題でもない。

彼女は、周りが知れば誰だって同情するくらい、

本当に可哀想なのだ。

 

 

結婚し、2人の息子をもち、その息子たちが成長して長男が家を出たあたりまでは、2人の息子の仲が悪く、互いにまったく関わろうとしなかったこと以外、どこにでもある普通の家庭だった。

 

ただ、夫の仕事がうまくいかず、うつ状態になるまでは。

 

家庭内でも争いが多くなり、その環境を抜けられずにいた次男までが、家族に対して心を閉ざしてしまった。

 

そこから今の最悪な状況になるまで、長くはなかった。

 

次男が家を出、ボケ始めている彼女の母と夫との三人暮らしになってからのある日、

夫が自殺した。

 

 

 

それからすこしの時間が経ち、

悲しみに打ちひしがれていた彼女も前を向こうとしているが、

心を閉ざしたままの息子と、

厄介な性格をもつ彼女の同居の母に挟まれ、

彼女が抱えるストレスは計り知れないだろう。

 

「あの時ああしていれば、こうしていれば、こうはならなかったのかも」

 

彼女は元々とても明るい性格で、優しく、社交的なところから友達もたくさんいる。

心の強さを持ち合わせていた彼女でも、さすがにバランスが取れなくなっている。

 

今さら何を思ったとしても、戻ることはできない。

前を向いて、歩いていくしかない。

 

 

 

私は、人に起こる出来事は平等だと思っている。

 

良いことも悪いことも、平等にある。

 

それに、自分の気持ちの持ちようによって、良い方にも悪い方にも事を運べるとも思っている。

 

どうしてここまで不運が彼女を襲うのだろう。

前世でなにか、重大な罪を起こしでもしたのだろうか。

 

今の彼女は、誰が見ても不幸だといえる。

 

でもそうしたら、幸せ、って、なんなんだろう。

 

苦しめられることもなく、悩みもなく、なにもない日々が幸せなのだろうか。

 

それも、ひとつの幸せかもしれない。

 

私は、幸せというものは自分で作り出すものだと考えている。

 

主体的にならなければ、楽しいことも嬉しいことも、なにも起こりやしない。

なにもしなければ、なにも始まらない。

 

私は彼女に、踏み出す勇気を持って欲しいと願っている。

彼女の悲しみがどれほどのものかなんて、本人にしかわからない。

 

でも、少しずつでいいから、自分で再び幸せを掴んで欲しい。

 

 

 

これ以上、彼女を苦しめることがありませんように。

 

 

 

第二の人生を歩く勇気と、希望が芽生えますように。